インタビューvol. 6 伊是名夏子さん「助け合う社会」

 

伊是名 夏子さんは骨形成不全症という骨の折れやすい障害があります。
2人のお子さんの子育てに奮闘しながら、助け合える社会を目指して、執筆や講演会などをしている伊是名さんにお話を伺いました。

助け合い

ー講演会ではどんなテーマが多いですか?

伊是名:対象によって変えていますが、「助け合うためにどうやったらいいと思う?」ということをメインにしています。

障害のある人の一番のポイントは人に助けてもらわないと生きていけないということです。「人に助けてもらわないと」と言うとマイナスっぽい感じですが、本当は人がつながったり、助け合いができたり、お互いがいい意味で変わっていくというのができる、よい「チャンス」なんです。
講演の中では「もっと助け合いをしてもいいよね」「後ろめたく思う必要はないよ」「どうやったら助け合えるんだろう」ということを話しています。

私自身は結構声を上げて「助けて」と言えますが、言えなかったら相当大変だと思います。私だって「助けて」と言うのはめんどくさいし、言いたくない。声を上げたり、常に「助けて」と言うのは疲れます。

例えば、喉が乾いて水が飲みたいと思っても、蛇口が高くて届かないから誰かに「お水を注いで」と言わないといけなくて、それはめんどくさい。気をつかうし、怒られたらどうしようと思うこともあります。そういうのがいっぱいあります!
もっと環境や制度が整うのも大切ですが、お互いが本当に気をつかわずに、「助けて」と言い合えることが大切ですし、そうなったら楽だと思います。声を上げ続けるのはやっぱり疲れるので、気づいて欲しい、相手から声をかけて欲しいと思うことがあります。
だからみんながもうちょっと心に余裕があって、当たり前に助け合えるようになったらいいなと思います。

自分で選択する

伊是名:学校という環境は「自分のことは自分で」とか「忘れ物はダメ」「時間を守らなくてはダメ」とたくさんの規則がいっぱいあって、考える余裕が全然ないですね。誰かを助けようとしても「自分のことをしなさい、人のことはいいから」と言われてしまいます。一人ひとりが考えて動けないし、やりたいことができないから、もったいないなと思っています。

大人になってからも働き方ひとつにしても、選択する機会は少ないですね。「私は朝、出社します」「午後、出社します」「こういう風に働きたいです」ということを自分で選べると、ある意味、自分で責任をとって働けるし、意欲につながります。やってみて合わなかったらまた変えればいいんです。

日本では体調が悪くてもふらふらになりながら会社行く人が多いのですが、もっと休んだらいいのではと思います。そして、「休んだらこうする」という選択肢がもっとあったらいいですね。今は「行く」という選択肢しかないので・・。

一人ひとりが選べるようになって欲しい。でも1人で声を上げたり1人で休むのは辛いから、そんな人達がぽつぽつといたらいい。不登校なども認められつつありますが、やっぱり不登校はよくないと思っている人は多いのではと感じています。

私は大学生のときに学校に行かない子どもたちのフリースクールでスタッフをしていて、それがとてもよい勉強になりました。みんな生命力に溢れていました。高校は行かなくても大学は選んで行く子もいました。学校に行くのもひとつの選択ですが、行かなくても「いろいろな選択肢があるんだよ」というのがあればいいし、もっとみんながのびのびと選べたらいいなと思います。

私自身は選んできたし、戦ってきたというか、獲得してきました。高校や大学に行くときもめちゃくちゃ反対を押し切って入学しました。まずモデルとなる人がいなかったので自分で開拓しないといけなかったんです。
あとは訴えて、交渉してやるという感じでした。だからすごく考えないとやっていけなかったという面があって・・。それはいいことでもあるかもしれないけれど、ある意味疲れます。

ー疲れるのになぜ頑張れたのですか?

伊是名:やった方が楽しい。やりたいことが明確だったんです。やりたいと思ったから「それをやるためには・・」と考えました。だからハードルはいっぱあったけれどやりました。日本では、失敗をみんなダメなものとして思ってしまいがちです。
私はもともとハードルが低いというか、周りから見たら「車椅子だからできなくてもいい」というのが大前提にあって、ちょっとでもできると褒められました。基準が低くて、周りが求めるものが低いんです。
でも私がなりたいのはもっと高くにあって、だからそれを進んでいくと、ハードルがあります。反対する人も多かったけれど、応援してくれる人もいたんです。留学も出産のときも試行錯誤!どうやったらあそこにいけるんだろうとすごく考えて考えて・・。

ー途中でイヤになったりしませんか?

伊是名:イヤになってしまったらどこに行くの?(笑)「疲れた、もうイヤだ」と思うこともあるけれど、あそこに行きたいのだから、ここにいるのは楽しくないんです。今楽しくないのだから向かうんです。でも疲れもします・・。

若い人たちとの時間

伊是名:私は若い人が大好きなので、若い人と繋がりたいです。若い人に障害のことを知ってもらったり、助け合える社会について広めたいんです。例えば大学で教えてみたいですね。

若い人は賢いし、頭がいいし、柔軟です。どんな人でも受け入れられる。でもいろいろ勉強したり学んだりしていくうちに、「多様性を認めない方がいいんじゃないかな」と思う部分が出てきてしまう。若いうちだと結構柔軟に、「いろんな人がいるよね」と思えるでしょう。そういう経験がないと、大人になって車椅子の人に会ったとき、線を引くことの方が楽になりがちだと思います。

一昨年、相模原の障害者施設で殺傷事件があって、たくさんの障害者が殺されました。
あの人も小さい頃やもっと若いときに、障害のある人にもっと触れ合っていたら、「障害者なんていなくていい」と言うことは思わなくて済んだかもしれません。また、あのニュースを見たとき、「そう思っちゃうこともあるよね」「障害者はいなくてもいいと思うけどそれは口に出せないし」という人もいたでしょう。

だからこそ障害のある人がいろいろな生き方をしているということを、若いときに知るのはすごく大きいです。
私の子どもたちが行っている保育園のママ達は、他の場所で障害がある人のことを聞いたり見たりしたら、「うちの保育園にもいるわ」と思ってくれるかもしれません。保育園の子どもたちはみんな、車椅子のママがいるのが普通になっていって、大人になって障害がある人と出会ったとき、「保育園のときの友達はママが車椅子だったけど、なんか普通に生活してたよなぁ」と思ってくれると思うんです。
だからそういうのを広めたいなぁと思います。この自分の生活を見てもらって、徐々に徐々に知ってもらえたらいいなと思います。

ー「どうやって助け合っていいかわからない」という人がたくさんいそうですね。声をかけていいのかなとか・・。

伊是名:そう、そうなんです!でも絶対声かけた方がいいです。助けがいらなければ断るので。そして断られたときに自分を責めない方がいいですね。
小さいときに「人のことはいいから自分のことをやりなさい」と言われた経験や「失敗してはいけない」ということも大きいのではと思います。そういうことが積み重なってそう思ってしまう。
もっと小さいときに助け合うことの成功体験や、自分でしたことの失敗経験がいっぱいあって、それが続いていたら言えるはずなんです。声をかけてみる、断られても気にしないということが当たり前になって欲しいです。

具体がプラスに

ーなかなか助けてもらえなかったり、うまく行かないとき、悲観的になりませんか?

伊是名:なると思いますが、私は平均よりはならないないと思います。落ち込むこともあります。でも変えていきたいです。
悲しいことや辛いことがあっても、今どうにかしたら変えられると信じています。時間の経過などによって変わることもあるけれど、他人が変えてくれるとは全然思っていません。自分の力でしかよくはしていけないと思っています。

ーその湧き出るパワーがどこから来るのでしょう?

伊是名:「楽しい方がいいじゃん」という気持ちです。誰も救ってくれないんです。誰かがやってくれるならすがりたいし楽になりたいけど・・。なかなかうまく助けてもらったことがないんです。だから自分でやってきました。

「それはあなただからできるんだよ」と言われたりしますが、それを言ったら終わりなんです。だって変われるのは自分だけだから、私がずっと悲観的でいることももしかしたらできるかもしれないけど、それではあまり楽しくない。「楽しくないなら楽しいとこに行けばいいじゃん」と思っています。「あなただからできる」と言われると、「じゃあ、あなたはどうしたいの?」と聞きます。

そういう人は具体的に考えていないことが多いんです。できるためにどうしたらいいのとかを考えるよりは、ただ怖いとか不安に押し殺されてしまう。具体的に考えたら、明るくする方法や、プラス思考に変える方法があるよ伝えたいです。

あとは「これがやりたい!」という気持ち。例えば「海外に1人で行くなんて凄いですね、あなたにしかできないですね」と言われたとき、「いやいや誰でもできるから」と思います。
「何が不安なの?」と聞くと、「んー不安」「1人で行くなんてとにかく不安」「道がわかるか不安」という答えが返ってきます。そうしたら「じゃあまず1人で隣のスーパーに行くことから始めましょう」と提案します。「次は一人で国内線を使うことから始めましょう」とか、「道はスマホで調べましょう」とか・・。

みんな不安そのものに対してアバウトなのかなと思います。何が不安なのかもわからなかったり・・。でも一緒に考えてくれる人は必要かもしれない。

ー琉球新聞で初めての記事を書くことから始まって、今は執筆や講演、子育てに大忙しですね。

伊是名:最近はすごく面白いと思うこと、ありがたいと思うことが増えました。
35歳という年齢もあるけれど、結構自分に自信がつくようになって、自分が昔やってきたことが今につながってきているのを感じます。
例えば昔フリースクールで教えてた生徒さんが、いまヘルパーとして我が家に来ているんです。。そのときの小学生、中学生だったのに。。昔やっていた活動が、今コラムの仕事に役立ってきたりしています。自分がボランティアなどで好きでやってきたことが形になっていることが最近とても多いです。

デンマークに留学しているときに、私の中で、いろいろな価値観が変わって、それを発信していきたいなと思って、2004年からブログを始めました。自分が好きで趣味で始めたものを、いろいろな人が読んでくれています。

35歳になって、こういう風に人生が作られていくんだと、最近希望や勇気というか、自信になっていています。将来どうなるかなんてわからないものです。どこで種をまいて、花が咲いて、どこで実になるかはわからないから、面白いし、ありがたいです。

(インタビュー:寺中有希 2018.2.28)

 

プロフィール:

伊是名 夏子(いぜな なつこ)

コラムニスト、神奈川県在住。

東京・中日新聞「障害者は四つ葉のクローバー」やハフポストに連載中。骨の弱い障害「骨形成不全症」で電動車いすを使用。身長100cm、体重20kgとコンパクト。右耳が聞こえない。4歳と2歳の子育てを、総勢10人のヘルパーに支えながらこなす。早稲田大学卒業、香川大学大学院修了。アメリカ、デンマークに留学。那覇市小学校英語指導員を経て結婚。
「助け合う」をテーマに16歳からの講演は50回以上。好きなことは、パンダ、体と環境にいいこと、性教育。

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