インタビューvol.15 津村俊充さん「自分らしく共に生きることを探求する」

 

この40年間、体験学習の分野で活動している津村俊充(つんつん)さん。つんつんが主宰するJIEL(ジャイエル、一般社団法人日本体験学習研究所)のTグループに茶木(PAJ代表取締役COO)が参加したのがご縁でお話を伺う機会をいただきました。人と共にあること、自分が自分らしくあることについて考えさせられたひと時になりました。

体験学習との出会い

ーー体験学習との出会いはいつですか?

1977年、南山短期大学人間関係科に非常勤として2コマ持つようになったのがきっかけですね。その後、1979年に専任の教員になりました。もう40年になりますね。

専任教員としての着任は4月1日なのに、その手前の2月にTグループに参加するように言われて、何のことか分からずに参加しました。そして2月に自分が参加したばかりなのに、その翌月には学生さんのTグループがあるから来てくれと言われて、TグループのTの字も十分知らないで行ったんです。

ーートレーナーとしてですか?!

今だったらあり得ない。経験豊富なトレーナーがつくから心配ないと言われて3月にその方とTグループをやったのが、私のトレーナーやファシリテーターの原点ですね。

ーーそれはどんな体験でしたか?

かなり強烈な体験でした。私にとっては、共に過ごしたトレーナーがある意味、アンチトレーナーというか反面トレーナーになり、そのトレーナー像を払拭するのに30年ぐらいかかりました。

ーーどんなところが反面トレーナーとなったのですか?

トレーナー然として怖い存在で、メンバーの間にはかなりの緊張感が高まる中でその人の課題となるだろうことをビシッと指摘するみたいなところですね。こういう言い方は失礼かもしれないけれど、厳しい目でみて、一人ひとりの問題を見つけて改善させていく感じでしたね。

そのTグループの中で「ギブの4つの懸念」というメンバーの懸念(不安から生まれる葛藤や心配事など)尺度を使って測定してみると、セッション1からセッションが進むにつれて、懸念の値がぐーんと上がっていきます。そうした中でそのトレーナーがちょっとニコッとしたり、いいね的なことを言うと、学生たちがホッとしてびゅーんと懸念の値が下がっていくんです。

Tグループが終わった後はみんなで肩を組んで、よかったーみたいになっているけれど、何がよかったんだろうと思いました。それが体験から学ぶということなのかと疑問でしたね…。それがずっと私のトレーニングやファシリテーターのあり様を探る、極端に言うと生涯の課題になりました。

今は違うけれど、私が知る限り、1970〜1990年代のTグループが盛んな頃はTグループの中でかなり厳しい対決、対峙をして自分と向き合わせる、もしくは周囲から厳しいフィードバックをもらうということをしてきました。トレーナーには、メンバーの問題を指摘したり、修正を求める働きかけ(介入)が必要とされていて、私にはそんな場は居づらかったですね。

私自身はラボラトリー体験学習と出会ってから30年くらいは悪戦苦闘。まだ自分でしっくりいかない部分もありながらも、ここ10年くらいは、参加者の体験や思い、参加者が何をしたいかということに焦点を当てたグループ体験を運営できる実感を持ち始めましたが、それまではしんどかったですね。そのしんどさの中には、トレーナーは「参加者(メンバー)を変えなければいけない」、それが仕事だと思っていたのかも知れません。

今は私の中では極力参加者に寄り添いたいという気持ちがあります。一人ひとりが何を大事にしながら生きようとしているのか、ということを共に明らかにしていきながら、共に生きていられるとはどうすることかなあということを一生懸命に考えたい。「あなたのしたいようにしたら?」ではなく、「自分はこう思うよ」ということを伝えながら、共に生きていく場をつくりたいと思っています。

無条件の積極的関心をもつこと

この10年、私の中では、ロジャーズの「援助関係における中核三条件」のひとつである、他者に対する「無条件の積極的な関心」を持ち続けることが本当に大事だなと思っています。それは、その人が何を考え、何をしようとしているのか、というのを自分の枠組みとは違えども、大事にしていくことです。

もうひとつ大切にしているのは「AI (Appreciative Inquiry) アプローチ」です。人は生き生きと輝くエネルギーを与える力となる「ポジティブ・コア」を持っているという考えがあります。それをいかに最大化し、押し殺さずに花開くか、お互いに「ポジティブ・コア」を生かせる、その人の真価を発揮できる関係づくりを共に探求するアプローチです。

その人がその人らしく生きていられるということは、「真価を探求する姿勢」ということなんだと思います。参加者に寄り添いながら、参加者の歩む道を共に歩む、その人がその人として生きていける道が確実にちゃんとあるんだということが大切なんです。だから私の中では、無条件に相手に関心を持って関わることと、もうちょっと積極的に、人には本当に大事にしたいものがあったり、生きたいという願いがあるということに確信を持ちながら一緒にいるんです。

ーーどうやって相手に関心を持つのですか?関心の強弱や、ちょっと苦手なことなどはありませんか?

それはあります。でも自分の枠組みとのズレというか違いみたいなところに、何かヒントがあると思って見ています。だから自分の思っていることと合う、合わないとか、好き、嫌いとか、ぴったり感が生まれないというのは、綺麗事に聞こえるかもしれないけれど、そこにその人が持っている何かを見つけるチャンスになると思っていますね。だから何か引っかかったり、あれ?と思うときは、何か新しいことを発見するチャンスかなと思っているんですね。

そういうときに自分の方もいろいろ動かされたり、自分のストーリーと違うところが動き出したときに、「そうか」と思います。そこにその人の思いやストーリー、プロセスがあるなと思います。じっくり見て、関心を持って待っているということはかなりあるかもしれませんね。

ーーその人のことをどうにもわからないということはないんですか?

どうにもわからないし、どうにも手を出せないこともあります。その思いを受け止めるにも受け止められないような出来事もあったり、立ちすくむようなこともあります。

逆にグループのメンバーの方がそこにしっかり対峙して向き合っている場面をみるとすごいなと思います。メンバー相互に有機的な関わり合いの中でつながっていく、そんな出来事(時には奇跡的な出来事)がグループの中には起こることがありますね。

ーー40年間、ずっとやっている原動力はどこにあるんですか?

何なんだろうね…人が人と出会ったり、人が人を支え合ったりする、そんな場をつくる喜びや、そこに立ち会っている喜びがあるのでしょうね。

ーーご自身をどんなファシリテーターだと思いますか?

一緒に走っているというか、特に何もしていないというか…。一緒に汗をかいているような姿じゃないかなと思っています。伴走しているようなファシリテーターかもしれない。どこまでなれているかわからないけれど、ゼーゼー言いながら一緒にいるという感じかな(笑)。でも一人ひとりが何を大事にしたいのか、何を願ってそこにいるかとか、どこに向かいたいのかなどをいつも明らかにしたいなと思っています。

一人ひとりが言動の根本にあるものをたどっていくと、グループのメンバー間に深いつながりが生まれます。言動や行為だけを見ていたら、とんでもないことを言ったりとんでもないことをする人のように見えたとしても、その人が願っていることや、その人が何か思いやろうとしていることをきいてみると、根っこには誰かの人のために何がいいかなと一生懸命に考えていたり、抜け出したくてもがいていたりする姿が見えてきます。そうやってメンバーはつながっていけるんです。

変わることを目的にしない

体験学習のプログラムはすごくインパクトがあるので、すごく人が変化します。一方で変化するから特効薬として期待されたり扱われたりする可能性があります。変化するから、変化を求めてしまうし、そして変化させるために体験学習のプログラムに期待してしまうのです。Tグループがその最たるものと言えるかも知れません。インパクトが強いTグループ体験があり、メンバーに変化が起こる、その結果、変化させるためのTグループ体験が期待され、トレーナーやファシリテーターがそれに応えるように関わるようになっていったのかも知れません。

人は「変化させよう」として変化させられるものではなく、自分やグループ、チーム、組織がよりよくなりたいと思い、どうすればそうなるかを探求する結果として変化するんです。だから「変わる」とか「変わらせる」ということを目的にするのはやめましょうと私はいろいろなところで叫んでいます。

ーーこの何年か、成長しなければいけないと思ったり、思わされている感じがするんです。成長しないとこの社会にはいられないのかと思うことがあります。がんばってやって気づいたら成長していたのならいいけれど、私は結構がんばってるけど、まだ成長しなくはいけない、まだ頑張らないといけないんだと…。

私が私として生きられる職場があったり、共にいられる仲間がいたりすれば、それでいいんじゃないかと思うんですよね。

自分が持っていて埋もれている体験の中には、「ポジティブ・コア」が隠れていたり、相互にインタビューし合うことで聴けたり見えたりしたことを伝え合うことで心が開かれ、自己理解が深まることがあります。

AIアプローチは相手の真価、大切にしていることを探求しながら共に協働していられるかということを大事にしています。対話的組織開発の提唱者の一人であるブッシュさんは「Spirit of Inquiry(探求の精神)」の大切さを述べています。自分は何を大事にしたいのか、この仲間と何が出来るのか、もっと皆が生き生きするにはどうすればいいのかということを探求する、その精神を育てたいと思っています。

Tグループでは、「なんか変わって良かったー、楽しかったー」ではなく、「何をすればいいのか」ということを諦めずに考えたり、そこに光が差して喜びになったり、粘り強いinquiry(探求)の精神が生まれていくんです。

変わるとか変わらないではなく、探求をしているかどうかが大事なのではないかなということを言い続けたいですね。

光を当てる

ーー40年間やっていても、今もグループをみていて迷うことはありますか?

いっぱいある、と言っても、だいぶ楽になってきましたね。でも絶えず迷いながらいます。どんなプログラムを進行しているときもずっと迷っています。
本当にこの進め方やありようでいいかなと考えたりしています。これでよし、なんてないですね。

ーーいろいろな感情や気持ちが出てくる場にいることが多いと思いますが、そういうものに巻き込まれないためにしていることはありますか?

Tグループの中だと、どちらかというと巻き込まれていようという感じがあります。そちらの方に動いていかないと見えなかったり、感じられないことがあるような気がしています。相手と関わり、一緒に巻き込まれているという感じです。

ーー巻き込まれているときはどんな感じなんですか?

いろいろなことがあるけれど、自分に対してすごく腹立たしく感じていたり、自分を責めていたりするすごい辛い場面の人がいると、そういう人の思いに心を寄せてしまうこともあれば、笑いの渦の中に一緒にいて笑ったりもします。共に泣き笑いしている感じです。

ーー体験学習のファシリテーターの要件として一番大事なことは何ですか?

先ほどお話をした、メンバーに対する無条件の積極的関心を持つことです。一方、ファシリテーター自身が、自分のありようが極力見えている、自分の体験に開けている、モニターできているということかなと思います。できていなくても、ありようを探求していることが大切です。

メンバーの行動とその内側の世界、そこにいつも光を当てていることも大切ですね。「体験から学ぶ」というときに、人と人との関わりを大事にしながらつくっていき、表に出ている行動と、見えないけれど根本にある思いに絶えず光を当てながら、その人の存在というか、ありように光を当てるということですね。

そこにあるプロセスにつきあって、どんなことが起こっているのかということに絶えず光を当てていくんです。まさに、「探求の精神(spirit of inquiry)」です。

(インタビュー:寺中有希 2018.9.19)

プロフィール

津村俊充(つむら としみつ)

一般社団法人日本体験学習研究所(JIEL)代表理事・所長
南山大学名誉教授

〈つんつんのプロフィール〉
名古屋大学大学院教育心理学専攻博士課程前期修了。教育学修士。さまざまな領域へのラボラトリー体験学習の導入や普及に関心をもつ。マサチューセッツ大学教育学大学院にてセルフサイエンスを学ぶ。同時に米国NTL IntituteにてTグループやラボラトリー方式の体験学習のトレーナートレーニングを受ける。近年、NTLにてAIアプローチ、組織開発プログラムに参加。2011年日本人初めてのNTL Institute Professional Memberとなる。
2015年4月一般社団法人日本体験学習研究所(JIEL:ジャイエル)を設立し、ラボラトリー体験学習のコアプログラムであり、組織開発の源流でもあるTグループの開催とTグループ・トレーナー(ファシリテーター)養成に力を注いでいる

〈つんつんの近刊〉
2018 インターベンションスキルズ〜チームが動く、人が育つ、介入の理論と実践〜 W.ブレンダン・レディ(著)津村俊充(監修) 金子書房
2014 インタープリター・トレーニング〜自然・文化・人をつなぐインタープリテーションへのアプローチ〜 津村俊充・増田直広・古瀬浩史・小林毅(編) ナカニシヤ出版
2013 実践人間関係づくりファシリテーション 津村俊充・星野欣生(編) 金子書房
2012 プロセス・エデュケーション〜学びを支援するファシリテーションの理論と実際〜 津村俊充(著) 金子書房

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