インタビューvol. 14 西澤真樹子さん「博物館でわくわくを生む」

「ホネホネたんけいたい」(骨の写真絵本シリーズ)などで知られる「なにわホネホネ団」の西澤真樹子さん。「自然と市民と博物館をつなぐ」をテーマに活動するNPO法人、大阪自然史センターに所属している西澤さんは、博物館や自然の面白さを伝えるためにアイデア満載のミュージアムグッズの開発や子ども向けのワークショップに関わっています。東日本大震災以降は東北でもワークショップを開催しています。

博物館との出会い

ーー昔から博物館が好きだったのですか?

中学校・高校の理科研究室に動物の剥製や骨、石、植物などがごちゃごちゃと置いてあって、そういう空間がすごく好きでした。大人になってもこういう場に居続けるためにはどうしたらいいかと思ったときに、大学の授業で博物館学と出会い、学芸員課程を取りました。

2003年頃、当時の森内閣のIT国家戦略推進の動きを受け、博物館には標本登録台帳をデータベース化するための予算を持っていました。その入力作業のアルバイトとして大阪市立自然史博物館に潜り込んだのです。

そこは理科研究室がいっぱい並んでいるような所で、それぞれ専門の学芸員たちがいて、みんなと話すことができてとても面白かったです。仕事をしていると、「動物園でゾウが死んだから今から運ぶよー」と言われて、巨大な頭を運ぶのを見物したりして(笑)。そういうことが日常的に起こる所はいいなぁと思いました。

ところが肝心のデータ入力ではミスを連発してしまい…。1年間やって絶対向いてないと思っていたところ、隣りの部屋をちらっと見ると、手つかずの骨が山盛りになっていたんです。その骨の山を片付ける仕事をしたくて、学芸員さんの前で剥製をつくってみせたら、標本整理と登録の作業をやらせてもらえるようになりました。すごく楽しいし、骨に毎日触れるので骨のことをたくさん覚えられました。

ーー今も標本づくりをやっていますか?

今も毛皮と内臓と骨の標本づくりをずっと続けています。最初はデータ入力のアルバイト仲間で特に標本に興味のあった人たちと、終業後に学芸員さんから標本づくりを教えてもらうことからはじめました。しばらく内輪の放課後クラブのようにやっていましたが、小学生も含めてだんだん人が増えてきて土日の昼間に活動するようになりました。「なにわホネホネ団」と名付けたのは2004年の春です。

ーなぜ骨を好きになったのですか?

骨だけが好きなのではなくて、もともとの動物好きに加えてて骨も皮も毛皮も好きになりました。

2003年に近くにある動物園が閉園することになり、千点以上の剥製や骨格標本を博物館でもらうことになりました。嬉々として手伝いに行ったところゾウやカバの頭の骨などがごろごろあって、「すごい!かっこいい!!」と一気に骨の熱にやられてしまいました。

ところで、博物館にいる人にはそれぞれの特技や専門分野があります。私も何か得意分野がないと居づらいなと思っているときに、大量の骨を仕分けする中で、哺乳類なら大体の見当をつけられるようになってきました。博物館のために働けて自分も勉強でき、何より骨の形は面白くてハマりました。

その土地の持ち味を活かしたワークショップ

ーー博物館で行っている子ども向けワークショップについて教えてください。

NPO法人大阪自然史センターは、もともと博物館友の会を始まりとして法人化されました。子どものワークショップは博物館から委託を受け、大阪自然史センターの教育普及事業としてして実施されています。私はもともと一方通行の授業形式より、ワークショップ形式が好きだったので、自然や生きもののことを伝えるのにワークショップ形式はぴったりだと感じています。

ーーワークショップ形式というのはどんなものですか?

工作教室のように思われることもあり、実際にカードなどをつくることもあるのですが、成果物は何でもいいんです。その土地の何か、例えば「どんな野鳥が暮らしているか」をテーマにします。たまごや巣の標本、剥製や写真、鳴き声などを用意して、スタッフが子どもたちとやりとりしながら、観察したりさわったりといった体験ができるようにします。その上で何かをつくることもありますが、それは家に帰ってから体験を反復するためのツールなんです。テーマによっては、植物のニオイを嗅いでもらうだけなど、何もつくらないときもあります。

東日本大震災以降、東北でも出張子どもワークショップを始めました。その土地やそこにある自然をテーマにして、それを学びながら、楽しい時間を過ごすという形の支援がしたいと思ったんです。

例えば、「ここにはこんな地層があって、こんな化石がが出る」「日本中で見ても高い価値があるんだよ」ということや、そこで見つかってた昔の生き物の種類や特徴を伝えたりしています。東北の子どもたちとは大阪以上に一期一会ですから、ひとつの会場に4つくらいの遊び(ブース)をつくって、それぞれの遊びに対して伝えたいこと(テーマ)を設定しています。どんな子に何が響くか、わからないですもんね。

ーー東北ならではというのはどんなものがありますか?

東北地方ではとにかく化石が取れるので、行った先々で出る化石をテーマにしています。福島県ならフタバサウルスやアンモナイト、岩手県ならモシリュウや翼竜、宮城県なら日本で唯一魚竜の化石が出たりと、ネタには事欠かない場所です!

具体的な積み重ね

ワークショップの様子、奈良市立図書館 撮影:山中純二氏

ーーワークショップづくりにはどんなこだわりがありますか?

みんなに自然に親しみ、よく知ってもらうのが活動の目的です。「生き物を守ろう!」「自然を大事にして!」と言われても分かりにくいけれど、具体的な経験がたくさん積み重なると具体的に好きになって、具体的に理解できると思うからです。

「化石を大事にして」と言っても分からないかもしれないけれど、その場所がコンクリートで固められてしまったら、その奥にあるたくさんの地球の秘密を知る可能性がなくなってしまうかも、ということがワークショップを通して感じてもらえるかもしれません。ただ親しんでもらうというよりは、いつか一歩先に進んで、その動物や自然の立場になって考えられる人になってもらえたらいいなと思ってやっています。

そのため、内容の正確さにもこだわります。学芸員さんや研究者に監修してもらい、間違いなく伝えられているか裏付けしています。

ーーどんなテーマでやっていますか?

博物館では、館の展示や博物館にいるハカセたちとその研究内容に親しんで欲しいという目的もあるので、企画展にあわせたり、担当の学芸員さんと話して考えます。

一番分かりやすいのは、新しい発見をテーマにすることですね。去年、ある学芸員さんが大阪の地下から見つかったクジラの化石の論文を書きました。どんなところが新しい発見なのか、そのクジラはどうやって見つかったのかなどを子どもたちに知らせる方法として、学芸員さんと一緒に考え、「地下鉄クジラ」というワークショップができました。

ーーきいただけでわくわくしますね!

私たちは、子どもの体験と学びに寄り添う人たちが一緒になってつくる空間をワークショップと呼んでいます。そこで理解してもらうというよりは、帰ってから「今日何をしてきたの?」と身近な大人にきかれたときに、つくったものをツールとして、子どもからもう一回しゃべってもらうことを狙っています。テーマは学芸員さんの専門性のジャンルだけあるのでさまざまです!

学芸員とのコラボ

ーーテーマや内容が専門的過ぎると子どもたちには難しそうですが、子どもたちが分かりやすく学べるための工夫などはありますか?

絵本をつくる人も同じだと思うんですけど、「自分が子どもだったらどこが不思議かな?」ということを考えています。例えばキノコのワークショップなら「雨が降ったらなんで突然あんなにでかくなったり、ニョキニョキ出てきたりするの?」「なんであんな色があるの?」「毒はなんであるの?」など、自分たちが子どもだったら知りたいなぁと思うことを、素人代表みたいな感じで学芸員さんにきいてみるんです。

その答えを明らかにしながら、その学芸員さんが持っている宝箱みたいなところからテーマを選び出し、形をシンプルにして、それを子どもに伝える準備をします。それは翻訳者であり、編集者である感じです。本をつくるのとワークショップをつくるのは同じ感じかもしれませんね。

ーー内容はどうやって考えますか?

アンモナイトのワークショップをしたときのことです。化石がどうやって見つかるのかを紹介し、どんな色だったらアリかなぁと想像して塗ってもらいました。
アンモナイトの本当の色は誰も見たことがありません。ヒトはまだいなかったからです。ただ、化石が残されたおかげで、そのカタチはわかります。自分たちの住む地域が昔は海で、どんな生きものでいっぱいだったか、化石のおかげで知ることができるんだということを持ち帰ってもらいたくて企画しました。

その背景には、いまここは災害で大変だけど、地球は何度もそれを繰り返して今があるんだという時間的な想像力をふくらませて欲しいという気持ちもありました。

私たちのワークショップでは、子どもたちに話しているけれど、周りの大人も「へぇ!」ときいてくれています。子どもに話しながら、大人も一緒に学んでもらうんです。絵本と同じで、子ども向けにちゃんとつくったものは、大人にも子どもにも伝えられます。

ー一番伝わって欲しいことは何ですか?

何が響くかは分からないけれど、学芸員さんを介するワークショップでは、「ハチが好きすぎて研究者になる人が世の中にいるんだ!」「こういう人がいるんだ!」と思ってもらえたら嬉しいです。例えばハチのことで気になることが出てきたとき、「あの人にきいてみよう」と結びつくかもしれない。「博物館ってこんな人がいるところなんだ」とみんなの中に残ると、そのときだけではなくて、ずっと次に続いていきます。博物館も図書館と同じくらい使われて、愛されて欲しいですね。

ワークショップの様子、池田市立五月山動物園

翻訳者として

ーーワークショップは博物館が身近になる第一歩としていいですね。

ワークショップのネタは、学芸員さんが長年調べて分かったことの上に成り立っています。ワークショップのために研究の時間が削られてしまっては何のためにやっているか分からなくなってしまうので、ワークショップという枝葉の部分は私たちが担い、その土台になる根っこ、つまり知的な担保の部分は学芸員さん、という役割分担をしている感じですね。

博物館は人不足でほんとに忙しい。研究しろ、もっと教育普及もしろといわれたらヘロヘロになってしまいます。そこを市民と博物館の間にいる私たちと協力しながらやっていくというのはひとつのアイデアだと思います。

それに研究者には言いたいことがたくさんあり、学芸員さん自身がワークショップのテーマを考えると、かなり無理のある、モリモリ過ぎて結局分かりにくいものになってしまうことがあります(笑)。

自分たちが翻訳者として子どもと研究者の橋わたしをする作業が好きですね。自分が学んで分かったことを分かりやすく噛み砕いて、でも情報の質は落とさずにどちらも満足してもらえると幸せを感じます。自分が学んでみて「ここはすっごい面白かった!」と子どもに言えないと、子どもにはよく伝わりませんしね。

ーー何かをつくりあげるときはどんな気持ちでやっていますか?

ワークショップもそうですが、何か新しいものをつくっていく段階で壁に突き当たったり、ピンチになったときに、アイデアで切り抜けるのが好きなんです。思い悩むよりも、いかに面白く解決する方法はないかといつも考えています(笑)。話し合うことで情報が集まってきて、話しながら思いつくことが多いですね。それがとても楽しい。とにかく面白いとか楽しいということを関わってくれるみんなの報酬に出来るような、そういう仕組みをつくっていくのが好きだし、得意なんです!

(インタビュー:寺中有希 2018.8.19)

プロフィール

西澤 真樹子(にしざわ まきこ)
なにわホネホネ団団長。2003年「なにわホネホネ団」を結成、大阪市立自然史博物館を拠点に、小学生から70代までの団員約380名とともに哺乳類と鳥類の標本づくりをおこなう。2011年より東北沿岸の自然系施設と博物館の再開支援がをライフワークにとする。認定NPO法人大阪自然史センター教育普及事業・東北支援事業担当、大阪市立自然史博物館外来研究員、同友の会評議員、きしわだ自然資料館専門員。好きなものは自転車とお酒と猫と本。

『ホネホネたんけんたい』のシリーズ(アリス館)

分担執筆
『標本の作り方ー自然を記録に残そうー』(東海大学出版会)

イラストの仕事
『ヤモリの指から不思議なテープ』(アリス館)
『さくら猫と生きる』(ポプラ社)
『ダニのはなしー人間との関わりー』(朝倉書店)
『アメーバのはなし ―原生生物・人・感染症―』(朝倉書店)
『フライドチキンの恐竜学』(ソフトバンククリエイティブ)

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