インタビューvol. 37 島田龍男さん「出会い続ける」

自分らしく生きたい人へ向けた、人生経験のシェアリングサービス「another life.」やイベントなどを運営している島田龍男さん。いままでに500人以上のインタビューをしてきたそうです。さまざまな人との出会いを通して生まれてきているものについて伺いました。

言葉と出会う

ーー島田さんはインタビューをどうやって始めたのですか?

聴く仕事をしようと思っていたわけではありませんでした。株式会社ドットライフ共同創業者の新條から最初に「another life.」のコンセプトを聞いたときに、自分がやりたいことに近いと思いました。そしておそらく時間がかかるので、いまのうちに始めておいたらよいと思って始めました。

ーー話をきくときに大切にしていることはありますか?

目の前の人に興味を持つ、好きになる、ということを大切にしています。新卒のとき、営業支援に同行していた上司がめちゃくちゃお客さんの話を引き出せる人でした。引き出せるから、いま何を提案するべきか、しないべきかの判断ができます。

その方に「なんでそんなにきけるんですか?」ときいたら「本当にきこうと思ってるの?興味を持ててる?」と言われました。確かに私は「営業だからきかなくては」という感覚が大きかったんです。「きく」ということについて、とても気づかされました。

ーー何百人もの人の話をきく中で、島田さん自身の変化はありますか?

もちろんあります。例えば話をきく中で、自分の中で感覚として持っていたものに言葉が見つかるという点は大きな変化です。

もうひとつは、単純に「そういう考え方ってあるんだ」ということですね。考え方もそうですし、単純にそういう事柄が起こっているんだ、そういう発想もアリなんだと。自分ではいままで考えられていなかった領域の事柄、事象、考え方をいただけるので、自分にとって大きな糧になっています。

話をきく中で、ご本人が話しているうちに気づいたり、その時のことを思い出したと言ってくださることがすごく多いです。誰かが誰かの話をきくという、その構造自体にものすごく価値があるのだろうと思いました。

ーー私はインタビューをすると、すぐその人のことや物のブームになるんです。

その感覚すごくわかります!きいた話をすぐ人に伝えたくなります。その話のスピーカーになりたいというのではなくて、面白い話をきいたストックが自分の中にあって、目の前にいる人にとって旬度や純度が高いものや、自分の中のタイミングで何かに紐付いたら伝えたくなりますね。

誰かひとりのために

ーーそもそも「another life.」を立ち上げたときの一番の思いはどんなところにありますか?

形にこだわらず、自分なりに夢中になれるものや、情熱を注げるものが見つかっている人を増やしたいというところです。

そのための手段として、きっと身近な人のストーリーを知ったら考えるきっかけになるし、考えるうえでの選択肢にもなるだろうと思っています。

ーーインタビューや「another life.」という形がいいという実感はありますか?

もちろん全ての人に有効だとは思っていませんし、事業的、サービス的な意味でも、課題はたくさんあります。ただし価値もものすごくあると実感しています。

誰かの人生にとって、他の誰かの人生経験が価値になる瞬間がいままでにたくさん起きました。

私たちは、そのコンテンツが1人にでも刺されば価値があると思っています。

情報が溢れ、様々な価値観を持つことが肯定されるこの時代、100万人に刺さるコンテンツというのはもうこれからはあまり出てこないだろうと思っていて、それなら1人に刺さるコンテンツを100万個つくる方がいまの時代に合っているのではと思っています。

また、話し手が苦労されたときのことをお伺いすることも多いのですが、その時代、その時期の、その本人に届いていたらすごくいいのではないかと思っています。

話し手が自分の人生を追体験し、いろいろな気持ちを思い出したり、自分がやりたいことはここなんだともう一度気づいたりします。インタビューした後の原稿修正のプロセスの中で、結局これが自分の一番言いたいことなんだと分かることもあります。

コンテンツを見てくれる数は多い方が絶対にいいのですが、そうではなくても、悩みや課題を持った人がインターネット上で検索して、探せる状態にある、たどり着ける状態にあるということが、少なくとも価値なのではと思います。

これは儲かりづらいのでやる人がいません。だからこそ、今からやって数を増やすことに絶対価値があります。

出会いを高める

ーーいまはどんなことに興味を持って動いているのですか?

会社を立ち上げた当時から「やりたいことを見つけて欲しい」という想いがありました。いろいろやってみて、私たちが最近持っている仮説は、やりたいことが見つかるときにはその前に「良い出会い」があって、その中からやりたいことが生まれるのではないかということです。

そんな出会いを構造的に生み出せたら、世の中はもっと良くなるのではと思います。実際に世の中ではそういう出会いはたくさん起きてるので、その再現性を高められたり、出会いをプロデュースできる人が世の中に増えたら、なんかめっちゃ面白いんじゃないかなと思っているんです!

ーー「良い出会い」とは?

100人に1人とかあるんですよ、出会った瞬間に「めっちゃわかる!何かやろう!」ということが。そういうときには結果、何かが生まれたりします。

でも「良い出会い」をしているのに次に進まなかったり、本当は良い出会いにできるはずなのにうまく出会えてなかったりしていることもあります。場の仕立てや設計に課題があることも多いので、そこを解決できる事業の仕組みやサービスをつくりたいと思っています。よい出会いとはどういうことなんだろうと考えています。

ーーよい出会いを大事にしてるのですか?

よい出会いがあるから、ものごとが生まれます。出会いをつくるから、さらにそこからコトが生まれることがきっとあると思うんです。そこもちゃんと構造化していきたいです。

構造化できるもの

ーー構造化するのが好きなのですか?

けっこう好きですね。殆どのものには再現性はないと思っていますが、できるなら構造化した方が生産性が高いと思います。

世の中には個別ケースのことがとても多いですし、生産性という言葉はあまり好きではありませんでも時間は有限なので、それ以外で圧縮できるものは圧縮したらいいという考え方です。

ーー目に見えないものを構造化している感じですか?

目に見えないと思っているものの中で、でも本当は見えてるものを構造化すればいいんです。目に見えないものは一生目に見えないし、何でもかんでも構造化、仕組み化できるとは思っていません。

ーー絶対に仕組み化できないものは何でしょうか?

すごく難しいですけど、私たちの会社でやっていることで言うと、「人生」は構造化できないと思っています。

一般論や統計などで、「身近な人が亡くなったり、病気になった人ほど、自分のミッションやビーイングが見つかりやすい」みたいなことがわかることもあるかもしれません。

でもそれを構造化して、「じゃあ9歳の時に一回死にかけましょう」となったらちょっとおかしい。大抵のものは構造化できないと思いますね。

だから何かを伝えるとき、「私のケースではこういうことをして、私はこれが正しいと思うからシェアする」「でもあなたにとっていいかはわからない」というスタンスが大事だと思っています。

出会い続ける

ーー「another life.」に訪れる人の中には、夢中になれるものを見つけられなくて苦しんでる人もいそうですね。

「何かを見つけなければいけない問題」がすごく幅をきかせています。就活でもそこをきかれて、嘘っぽいことを言って、やっぱりまた悩んでしまったり。そういうのは「見つかっている人の方がマイノリティだから。いつか見つかればいい」と割り切る、開き直ることも必要なのではと思っています。

ーー開き直る。

見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。でも少なくとも、「目の前に一緒にいるとテンションが上がる人や、やったら楽しいこと」があるのだとしたら、それを大事にした方が結果としては見つかる可能性が高いと思います。

ーー「テンションが上がる」を分解するとどんな言葉ですか?

「同じ感覚を持てる」だとテンションが低い場合もあるので…。ちょっとバカっぽい表現ですが「なんとなく好き!」とかでもいいと思うんですけど…。なんなんでしょうね。

ーーその人自身にエネルギーがあるという感じですか?

私はエネルギーに溢れる人に惹かれがちですが、それは人それぞれな気がします。私が仲良くなる人と、他の人がその人と仲良くなるのは違うと思うので、関係性とタイミングだと思います。あえて言えば、「いい出会い」ですかね…(笑)

ーー島田さんにとって一番、テンションの高い出会いは?

一番は決めづらくて、毎日ありがたい出会いを頂いてます。何かを一緒にやっている人は全員そういう出会いだったのだと思っています、本当に…。

いろいろな人に出会っていますけど、スルーしている人もたくさんいます。結果、一緒に何かをやっている人との出会いは、全部テンションの高かった出会いですね。

ーー何か一緒にやりたいという気持ちが生まれるのですか?

そうですね。出会った瞬間は何かを一緒にやろうと真面目に考えているのではなく、「なんか楽しい!」という、もっと手前な感じですけどね。

ーー感覚なんですか?

感覚だと思います。タイミングや時間もあります。一日違ったら全然違うこともあります。パターンわけはいくつかできますが、100%再現性があるものにもできないと思っています。

ーー感覚の感度を高めるのは、ひとりではできないですよね。やっぱり人と会っていく中でしか研ぎ澄まされていかないもしれませんね。

言葉を選ばずに言えば、この人は好き、この人は嫌いをたくさんやっていないと、まさに感度が上がっていかない気がします。

この1−2年、私は飲み会に誘われたら、予定が入っていなければ断らないと決めています。来週、熊本行こうと言われても基本、断らないです。お金がなくても行きます。そういう時こそ、何かあるんです。

自分が選んだものだと自分が見えている範囲で、興味がある範囲でしかないので、そうではないものは、必ず誰かが持ってきてくれます。誘われたものには基本的に行くことにしています。

ーーそうすることでテンションの高い出会いはありますか?

確率は上がります。何かしらの意味があって声をかけてくれるので…。行ってみて、何か価値が生まれるかもしれないし、生まれないかもしれない。過度な期待はしていません。出来事は蓋を開けてみないとわからないので。

自分からはなかなか変われないから、人から誘われる環境に行くし、人から誘われたら断りません。自分を変えてくれるとしたら、人がきっかけだと思っているので、そうしているのだと思います。

(インタビュー:寺中有希 2020. 2.17)

プロフィール:

島田 龍男(しまだ たつお)
株式会社ドットライフ取締役 CTO/株式会社ワクワクプランニング代表

早稲田大学卒業後、株式会社ネットプロテクションズ入社。後払い事業の営業、社内情報活性化プロジェクト、新規事業担当等を経た後、シンクタンク・ソフィアバンクにて経営者向け事業のプロジェクトマネジメント等に従事し、ドットライフ立ち上げに参画。2017年より、内閣府「日本の国境に行こう!!」プロジェクトに関わる。

https://an-life.jp/portfolio/14